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地域医療の充足に関する調査

令和3年度 地域医療充足度調査

NPO法人艮陵協議会 理事・事務局長
東北大学災害医療国際協力学 教授
江川 新一

令和3年(2021年)6月に行った地域医療充足度調査結果を報告します。この調査は艮陵協議会の事業の一つとしての研修医および専門修練医の動向調査とともに行ったものです。アンケートを送付した120病院のうち51病院(42.5%)から回答がありました。

1.初期研修指導医の充足度について。(有効回答のみ)

① 卒後7年目以降の全医師数2,649名
②うち初期臨床研修指導医資格を有する医師数 1,674名 (①の63.2%)(昨年度は66.8%)
③卒後3-6年目の医師数 536

図1 病院ごとの臨床研修指導医の比率

2. 指導医の充足のために取り組まれていること

その他の取り組み:

  • 臨床研修指導医講習会を開催している(年1回程度)
  • JCEPの認定を継続受審し、臨床研修医への指導の質の向上に努める。
  • 秋田県臨床研修協議会及び秋田県医師会の指導医講習会へ、当院指導医をタスクフォースとして派遣している。
  • JAMEPの基本的臨床能力評価試験の結果を基に、当院の研修プログラムの指導内容を確認し、指導医へフィードバックしている。
  • 指導医講習会受講費を病院負担としている。

 

3.考察

今年度はアンケートの調査項目を簡素化し、指導医の充足に焦点をあてて調査を行いました。初期臨床研修の指導医は、卒後7年目以降の研修医を指導する立場にある医師が、厚生労働省が認定する臨床指導医講習会を受講しなければなることができません。ご回答いただいた施設の卒後7年目以降の医師のうち、初期臨床指導医資格を持っているのは63.2%でした。いくつかの基幹的な研修病院からの回答がなかったため、一概に比較はできませんが、指導医の数、比率は横ばいのようです。新型コロナウイルス感染症の影響により、対面式の指導医講習会を行うことができなかったことも大きく影響していると思われます。比較的早い段階から完全オンラインによる指導医講習会を開催しましたが、参加人数を24名、あるいは32名に絞ったことも影響しています。

図1は回答いただいた病院における卒後7年目以降の医師数と指導医の比率を表しています。人数の多い組織では60%以上の指導医比率ですが、大学病院のように人事異動が頻繁だと、適切な指導医数を維持することの難しさもあると思われます。また、医師数の少ない施設では指導医比率のばらつきが多く、指導医資格を取得することの必要性によっても取得率が変わると想像されます。

厚生労働省の臨床研修指導医講習会の認定要件は、必要な項目を満たすワークショップ形式で休憩時間を除いて最低16時間(1泊2日あるいは2泊3日が必要)の研修時間が必要な指導医講習会で、定員も最大48名と決められています。取得を希望される方は、ぜひ艮陵協議会の指導医講習会を受講してください。初期臨床研修指導医講習会への参加を病院が負担することや、NPO 法人卒後臨床研修評価機構(JCEP)による研修プログラムの評価の受審、NPO法人 日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)の基本的臨床能力評価試験による研修医の臨床能力評価を行っている病院もあります。2年間の初期臨床研修が終了すると、ほとんどの研修医はなんらかの専門医プログラムに進むことが予想されます(令和3年度 研修医・専門医の動向調査を参照ください)。専門修練医は、すぐれた指導医のもとでの専門医研修を望んでおり、加盟病院におかれましても、すぐれた指導医の確保は大きな課題です。高齢化とともに、人口減少が進む地域においては、病院の収益も悪化しかねず、医師の確保そのものが困難になっているかもしれません。また、指導医クラスの医師を確保できなければ、地域を守るセーフティーネットとしての病院機能が低下し、病院の存続も危うくなる可能性があります。人口が減少しても、高齢化による地域医療のニーズはますます多様化しています。多様な診療科をそろえる、あるいは、総合診療をはじめとする多様な医療ニーズに応えることのできる医師の確保は大きな課題です。

指導医充足のために加盟病院がされている努力は多岐にわたります。大学の医局は地域医療への人材供給元となっています。各病院では指導医資格を取得するよう、支援がおこなわれています。医師の雑用を減らし、学会・研究会などにも参加しやすくするための環境整備や配慮もなされています。その一方で、大学からの支援がなくなったという声も聞かれます。たとえば消化器外科と消化器内科、麻酔科などの関連する複数の診療科が揃うような工夫はもっとできるかもしれません。人材を供給することができる大学と、地域のニーズを調整する仕組みが重要だと思われます。給与や人材マッチングサイトなどの利用率は低く、信頼できる医師の確保の困難性を伺わせます。

艮陵協議会の指導医講習会では、『いい研修病院とはなにか』、『一人前の医師とは』『楽しく教育するにはどうしたらよいか』など関連しそうなテーマでグループワーク、ワールドカフェなど多角的な議論を巻き起こす工夫をしています。医療従事者ができること、各病院でできること、行政を変えていく必要があることなどさまざまなレベルでの改善点があるものと思われます。

今後もこのような調査を継続的に行うとともに、ご意見を少しでも反映させられるようにするにはどのようにしたらよいかを皆さまとともに考えてまいりたいと存じます。

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